2008年12月28日日曜日

カメラマンと三角の矩

あるカメラマンの下積み時代の話。

スポーツカメラマンを目指していた彼は、深夜に及ぶアシスタント業務を終えると、毎日のように歩道橋に向かう。そこで想像のカメラを構える。そのカメラには業界で“長玉”と呼ばれる重くて長い望遠レンズが付いている。テレビのスポーツ中継などで一度は見たことがあるだろう。まるでバズーカ砲のようなサイズのレンズだ。

レンズの筐体を支える左手、シャッターに添えた右手、ファインダーをのぞく眼を一直線になるように構え、下の道路を走るクルマを想像のファインダーに捉え続ける。むこうから迫ってくるクルマに想像のピントを合わせながら、橋下から飛び出してくるクルマを瞬間的に捉え、見えなくなるまで。専門用語で“流し撮り”といわれる技法だ。超望遠レンズの視界は驚くほど狭い。手元の1ミリのズレや微妙な手ブレで、決定的瞬間を撮り損なってしまうことがあるのだ。一瞬を捉えるための何年にも及ぶ地道な鍛錬。

「もちろん、それもあるけどさ。この練習を続けていると、面白いことができるようになるんだ」

カメラの世界の人間関係は“年功序列”と“撮ったモン勝ち”という相反する要素が複雑に絡みあっている。新人である彼は撮影エリアでの場所取りには苦労するのだという。しかし、なんとしても“決定的一枚”を撮らないことにはカメラマンとして日の目を見ない。

そんな現場で彼が身につけた技。カメラを構えながら、撮影の邪魔になる障害物(他のカメラマンの荷物だったり、人間だったり)を望遠レンズの筐体で「押し除けたり、時にはブッ飛ばしたりできるようになる」というのだ。もちろん、ファインダーには被写体を捉えながら、だ。ただ単純に望遠レンズを振り回して相手にぶつけたのでは、こんなことは出来ない。構えを決め、全身をひとつにして、大きく重い力をブレることなくレンズの筐体に伝えるのだという。

もう二十年近く前に聞いた、そんな若いカメラマンの自慢話を突然思い出した。
「あ、アレって、コレのことだったのか!」
このカメラマンの裏技的な技術は、剣術や柔術でいうところの“三角の矩(みすみ-かね)”と呼ばれる身体操作と同じなのだ。職人の世界、匠の技術には、相通じる要素があるのだなぁ。

現在、カメラは劇的な進歩をとげ、銀塩フィルムからデジタルへ。昔のようにフィルムを惜しみ、残枚数を気にしながらシャッターを押す必要はない。手ぶれ補正は当たり前。ファインダー内は常に安定している。それはそれで素晴らしいこのではあるのだが、いかにテクノロジーが進歩しようとも、こういった身体操作術はなくならず、次代に引き継がれていく……といいなぁ。

2008年12月25日木曜日

天秤棒稽古

前々から棟梁にお願いしていた六尺棒掛と木刀掛がついに完成。縁取入りの台座に八角棒を組んだ本格的な仕上がり。

さらにもうひとつ。これも以前から頼んでいた極太の樫製六尺棒も今日到着。

常寸は直径一寸(約3センチ)なのだが、これは直径一寸半。しっかり手の内を決めて振らないと、指を引きちぎって飛んでいきそうな重さだ。力でねじ伏せようとしても、十回も振れば前腕の筋肉がパンパンに張ってしまう。

昔日の関口流柔術の達人は同じような極太の六尺棒を自在に振り回し『紀州の天秤棒』と呼ばれて恐れられたという。

私の場合は、武技としてというより、それ以前の身体の使い方を学ぶため、極太六尺棒に振り回される稽古の日々がしばらく続きそうだ(^_^;)

2008年12月21日日曜日

上野と嫁と股関節

12月18日の『報道ステーション』で、ソフトボールの上野由岐子投手の特集が放映された。

ここで語られたのが北京オリンピック決勝戦前日の秘話。上野投手は股関節に痛みを感じ、まともに歩けない状態だったという。トレーナーは「股関節が完全に(!)はずれている」と判断し、深夜までかかって股関節をもとの位置に戻し、彼女は無事にマウンドに立った……と。

これを見た嫁さんは呆れ半分、怒り半分。

「股関節が完全に脱臼したんなら、投球はおろか立つことだってできないはず。これは絶対に完全脱臼じゃない。こんないい加減なことをニュース番組で言うなんて!」

嫁さんは自らが股関節で苦しんできただけに、よく分かっている。

彼女の言うことが正解だ。

股関節は骨盤にあいた半円状の深い穴に、大ももの骨の球状の頭が入るかたちでつながっている。一般的に“ボール&ソケット”と言われる形状の関節だ。この関節は人間が直立二足歩行をするための要のひとつでもあるため、複数の強固な筋肉や腱によって支えられている。交通事故に遭ったとか、高い場所から落ちたとか、アンドレ・ザ・ジャイアントに足を掴まれて、そのまま振り回されたとか、そういった大きな外力がかからない限り、そうそう簡単に脱臼してしまうことはない。

失礼を承知で言おう。ソフトボールの投球程度で股関節が完全脱臼してしまうなら、スポーツなど止めた方が賢明だ。

もし百歩譲って、上野投手の股関節が完全脱臼していたとしたら、歩行が困難になり痛みを訴える程度ですむはずがない。足の長さは極端に違い、立つ事もできなくなり、激痛でのたうち回るはずだ。こうなってしまうとトレーナーがどんなに腕が良かろうと、ストレッチやマッサージで整復できるはずがない。

ましてや翌日すぐにマウンドに立ってピッチングを行うなど、考えるだけで恐ろしい。一生残るような障害を負う可能性があるのだ。もちろん、上野投手の股関節が完全脱臼していたというトレーナーの判断が正しかったとすればの話だが。

ちと脱線するが、今年、膝を故障したプロ野球選手の引退に際し、チンピラ歌手が「球団に片足捧げた」を褒めたたえていた。相変わらず日本人は『巨人の星』風のスポ根ストーリーが好きだよなぁ。私はこーいうの大ッ嫌いだけどね。

話を戻そう。おそらく、上野投手の股関節は“亜脱臼”あるいは“変位”といわれる状態だったはずだ。平たく言うなら「ハズレていた」のではなく「ズレていた」だけ。

勘違いしないでほしいのだが、だから「大した事ない」と言うつもりもない。人体は精妙にできており、ほんの少し骨の位置がズレるだけでも痛みや違和感が発生するし、それを戻せば嘘のように楽になる。これは私の使う南龍整体術の得意とする分野のひとつだから、よく分かっている。

しかし、番組中では私がここで書いたような説明は一切なし。「上野の股関節は外れていた」と繰り返し、スポーツ感動ストーリーとして紹介していた。

これは報道番組としていかがなものか?

医学的な検証があまりにも疎かにされていないか?

一般視聴者に誤解を与えるような番組になっていないか?

このトレーナー氏はWBCにも帯同した一流の方だというが、それにしてはあまりに言葉足らずではないか? まさか一流トレーナーともあろう方が上記のような知識がなかったとは考えられないからなぁ。

私も施術の現場で「ああ、これ背骨がハズレてるねぇ」とか「肩がヌケちゃってるよ」という言い方をよくする。おじちゃんおばちゃん相手に専門用語を使ってもハナシが通じないからね。しかし、それがどのような状態かについては、骨格模型や解剖図を使って分かりやすく説明するように、これまで以上に心がけていかなきゃなぁ。


追記:私と嫁さんが苦しんだ時期についてのお話が途中のままですが、続きについてはもう少し時間をください。あそこまで書いたら当時の怒りと悲しみと苦しみと、それらがごっちゃになった感情がよみがえってきて……まだまだ心を落ち着けて冷静に語れないことに気付きました。しばしお待ちを。

2008年12月14日日曜日

砂袋

自分へのお誕生日プレゼントとして、ついに購入してしまいました。

まさか自分が、しかも四十才を越えてから砂袋ドツいて部位鍛錬をすることになろうとは想像もしなかったよ(^_^;)

今は白魚のような私の指が、羆の手か、驢馬の蹄のようになるのだろうか? 不安と期待の入り交じる手固め稽古初日は四股立ちで二十回も突いたら中指がジンジンしてギブアップ。

ま、気長にやりますわ(-_-;)

しっかしさぁ。整体院の診療室にこーいうモノがあるのはいかがなものか……と買う前に考えもしなかった自分にちと呆れております(笑)

2008年12月13日土曜日

不惑

数日前に誕生日を迎え、いよいよ四十路へと踏み出した。

実感は……ないなぁ。まだまだ老いなど感じるべくもない。肉体的にも精神的にもかつてないほどの絶好調。さらに言うなら、この上り調子はしばらく続きそうな予感。願わくば鬼籍に入る前日まで絶好調でいたいもんだ。

しっかし、ガキの頃はノストラダムスに騙されて、20世紀の終焉とともに全てが終わると信じていたのに、気がつけば不惑かぁ。

さてさて、我が人生という名の道は、どこへ続いているのやら。この道を歩めば、どうなるものか。

「惑わず行けよ、行けばわかるさ。ダァーーーッ!」

2008年12月6日土曜日

ワイン

普段、酒といえば焼酎オンリーなのだが、ごくたまにワインが呑みたくなる。好みは安い白ワインだ。銘柄は問わない。甘口だろうが、辛口だろうが関係ない。贅沢はいわない。ただガブガブ呑む。潰れるまで呑む。

南十字星の下、夜風に吹かれながら、ヨレヨレのTシャツと薄汚れた短パン、素足にビーチサンダルを履いた仲間たちと毎夜そんな飲み方をした。肴代わりに将来の夢を語り合う。もう20年近く前になる。

あいつら、今、どこで、何をしているだろう。

昔を懐かしむほど老いてはいないとは思うのだが……まぁ、そんな夜もあるさ。

2008年12月1日月曜日

チャーシュー

出来ました。旨いです、と堂々自画自賛しちゃうくらい良い仕上がり♪ 洒落抜きで、これなら売れるわ。